先代、先々代からの言い伝えられたお話
その⑧
南国鹿児島で味噌醤油を造り始めてもう100年以上。
普段から色々な「食」にまつわる話を見聞きします。
今回はそんな中から一部をご紹介します。
私どもは、よく試験室で おみそ汁の「味」のテストをします。カップを2つ用意して、右には濃い味の味噌汁、左には薄い味の味噌汁。
さて、どちらがおいしいか・・・?
こんな場合、ほぼ9割の人が右の濃い味噌汁を「おいしい」と言います。そこでもう一度。
そのおいしい方の味噌汁と、さらに濃い味噌汁を用意する。
さて、今度はどちらがおいしいか?
大抵、最後の“一番濃い”みそ汁を「おいしい」と言います。
そうなんです。人間の味覚は一般的に味が濃ければ濃いほど、その質に関わらず「おいしい」と感じるものなのです。
これは何年も試験室で味を研究している私どもでも、犯してしまう間違いの一つなのです。作っている本人は真剣なのですが、気がついてみたら、濃くて濃くて“とんでもない味”ができあがっていた、何てことがよくあります。
これらの「みそ汁」は典型的な例。
ばっちり だしの効いた「濃い味」のみそ汁が、はたして実際 毎日の食卓で、本当に食べられるのか?
無理ですよね。すぐに飽きがきてしまうのがほとんど。
そしてみそ汁は、ご飯やおかずと一緒に食べるスープですので、そのみそ汁の味が濃いと、それだけで食事が重くなってしまいます。
インスタントスープや店屋物が、最初はおいしくても、「続けてはちょっと…」と言われるのは、このためです。
私どもが目指している「味」作り。それは一回きりで「おいしい!」よりも、ほんのりとした味で「明日も食べてみたい!」といわれる味。
みなさんも毎日のお料理で、この“濃さ”の事を意識して、
毎日の食卓を演出してみてください。