味噌作りを始める前に知っていてほしい「カビが発生する条件」と「事前の防止策」とは?

こんにちは。
私たちは、南国鹿児島で110年続く味噌醤油屋 (有)かねよみそしょうゆ です。

桜島を真正面に望む海岸端で、お味噌とお醤油を作り続けて110年。
日本のお味噌の9割以上は米味噌のところ、「麹歩合」高めで、約一ヶ月の熟成で造り上げる “多麹・短期熟成” の「麦味噌」を専門に造っている醸造元です。

そもそも全国には、味噌醤油屋さんが約1200社あります。味噌醤油の作り方は、その土地土地の気候風土と歴史性もあいまって、各地域ごとで随分違います。

ですから、作り方について「どれが正解」ということはありません。どの地域の味噌醤油もそれぞれ味わい深く、永きにわたって親しまれてきた伝統食品です。

ただし各社造り方は違っても、麹(こうじ)という“生き物”の力を借りながら発酵食品を造っていく過程の「味噌作りにおける失敗」という点に置いては、共通点が多いのも事実です。

これらの“共通点”を踏まえ、私どもが主催している「手作り麦みそ講習会」の受講生から受けた質問をおりまぜながら、職人の体験と知恵を交えて楽しく知っていただき、各家庭での味噌作りをより“楽しく” そしてより“おいしい”ものにしていただければ幸いです。

それでは始めましょう。

 麦みそ手作り講習会-基礎知識編 

味噌作りを始める前に知っていてほしい「カビが発生する条件」と「事前の防止策」とは?

今回は、当社の「味噌作り講習会」で特にご質問が多い「カビ」についてです。
本記事では、これまでの当社での実例をもとに、味噌作りの際の「カビが発生しやすい条件」「事前の防止策」をまとめました。

味噌作りの際に「カビ」でお困りの際に、この記事が解決の糸口になれば幸いです。

この記事の目次

第1章:これっていったい何? カビ?

1-1 :工場長が考えた「2つの可能性」

「お味噌を床下で熟成させていたら、味噌の表面にカビらしきものが現れた」
「麦みそ手作り講習会」を受講いただいた方から、このようなお電話がかかってくることがあります。

味噌の上に現れた”よくわからないもの”を「カビではないか?」と心配されるのは、ごもっともだと思います。

しかし、当社の工場長は、このようなお電話をいただいた時、一般的に発生しそうな「カビ」よりも、むしろ別のものの可能性を考えます。

工場長は、この道22年の大ベテラン!二代目社長と先代工場長のもとで学び、現在は、かねよみそしょうゆの蔵元である(資)横山味噌醤油醸造店の工場長として、三代目社長と一緒に会社を盛り立てています。


さて、工場長はどのように考えるのか、詳しく見ていきましょう!

工場長は、まず考えました。

そもそも、カビは「塩」に弱いのです。
お客様が「味噌の表面にカビらしきものが付いている」と言われる場合、塩が効いてる味噌の上に、塩に弱いカビが直接発生する可能性はかなり低いと考えます。

この理由から、味噌の表面の「白いもの」は、まずはカビではなく「産膜酵母(さんまくこうぼ)」ではないだろうか。このように工場長は考えたのです。

さて、ここで突然「産膜酵母(さんまくこうぼ)」という単語が出てきました。普段聞きなれない「産膜酵母」とは一体何なのか? そして、私たちが当たり前に「カビ」と言っているものは何なのでしょうか?

頭の整理をするためにも、次にこの「産膜酵母」と「カビ」つについて具体的に解説していきましょう。

1-1-1:産膜酵母

まずは、「産膜酵母(さんまくこうぼ)」です。産膜酵母とは、私たちの生活環境に普段からいる酵母菌の一種です。

味噌の表面にも、よく付くことがあります。人体には影響ありませんが、独特の臭いがあります。

そもそも「酵母」とは、味噌造りには欠かせないものです。当社でも、味噌造りをする際には、あらかじめ”味噌造りに最適な酵母を選んで”使っていますが、産膜酵母はその仲間です。

菌の形状は丸い粒状。小さな芽を出して1→2、2→4という風に細胞分裂を繰り返して増えます。

酵母のほとんどは、塩分があると活動できません。ただし、この「産膜酵母」は耐塩性があり味噌の表面にまれに発生することがあります。

もちろん人体には影響ありませんが、味噌の風味の劣化や色の変化を起こしてしまうため、なるべくなら避けたいものです。

もし、味噌の表面に「白いカビのようなもの」があったら、まずは「産膜酵母」を疑いましょう。産膜酵母の見た目の特徴としては、①フワっとしておらず、②ペロっと味噌の表面についている、そんな感じです。

1-1-2:カビ

もうひとつは、「カビ」の可能性です。「カビ」は「産膜酵母」とは明らかに違います。

産膜酵母が耐塩性があるのに対し、カビは塩に強くありません。塩のあるところでは育たないと考えられています。この点が産膜酵母と大きく異なる点です。

カビの見た目は、モワモワと花が咲いているようなお花畑のようです。枝が伸び、雑草が生えていくようなイメージです。

カビは、植物のように根と花(胞子)があり、この胞子が空気中に飛散しながらどんどん増えていきます。

1-2:実際にあったお話

では、私達が普段味噌造りをしている中で、実際にお客様からお問い合わせいただいた事例をご紹介したいと思います。

1-2-1:工場長へ入った1本の問い合わせの電話

ある日、ご自宅で味噌作りをされている方から工場長へ、問い合わせの電話が入りました。その内容は、「味噌の上に黒いものが付着している」というものでした。

この問い合わせが来たときに工場長は2つの可能性を考えました。一つ目の可能性は「白カビの上にできた黒カビ」。もう一つの可能性は、「産膜酵母の上にできた黒カビ」です。

1-2-2:工場長の推理

そもそもカビは、塩分に弱い特徴があります。ですから通常は白カビと黒カビが勢いよく拡がることは考えられません。

この観点から1つ目の可能性「白カビの上にできた黒カビ」の可能性は低いと考えました。

では、2つ目の可能性はどうでしょうか。

先ほどからお話ししている通り「産膜酵母」には「耐塩性」があります。まず、塩に強い「産膜酵母」が味噌の表面に発生する。

そして、産膜酵母の上に「黒カビ」が発生する。これならつじつまが合います。よって今回の場合は「産膜酵母の上に繁殖力の強い黒カビが生えたのでないか」と考えました。工場長の長年の経験からそう推測したのでした。

1-3:工場長の頭の中の再現とまとめ

「産膜酵母」と「カビ」の話しと立て続けに出てきて、少々わかりづらい部分もあったかもしれません。

ひとまずここで復習もかねて、工場長の頭の中で考えた順番を再度まとめてみましたので、一つずつ確認していきましょう。

1-3-1:「白いもの」について

まず、味噌の表面に「白い物」があったら、「産膜酵母」ではないかと疑います。カビはそもそも塩に強くありませんので、塩をまぶした味噌の上には育ちません。

また、カビの胞子は花が咲いたように広がって見えますが、画像を確認しても、その花が咲くようなフワッとした感じがありませんでした。さらに、臭いもするとのことでした。

【白カビではなく、産膜酵母を疑った理由】
①フワっとしていない。
②ペロっと味噌の表面についている感じ
③鼻を近づけると少し臭いがあるとのこと

1-3-2:「黒いもの」について

まず、塩が効いた味噌の上で白カビが繁殖するとは考えにくいです。ただし黒いものについては、過去の経験からも塩に直接触れない産膜酵母の上に黒カビが発生したものと推測しました。

1-3-3:味噌にカビが生えた例は1件のみ

実は、当社の味噌にカビが発生したという事例は過去に1件しかありませんでした。その1件は、業務用でお使いのお客様からでした。現場に行って確認してみると、コンロのそばに味噌を置きっぱなしにされておられました。

もうすでに、味噌の上には「たまり水」と思われる黒い液体が溜まっていて塩分も薄くなり、味噌の着色も進んでいました。非常に特殊なケースですが、このような環境ではカビが生えてしまうのも仕方ありません。

第2章:カビが発生する条件とは?

前章では、そもそもカビとは何かについて解説をしてきました。次にこの章では、カビが発生する条件について解説していきます。

2-1:カビが発生するためには4つの条件が必要

カビが生きていくために必要な条件は以下の4つです。
① 栄養
② 空気
③ 温度
④ 水
言われてみれば当たり前のことですが、この4つの条件がカビが生きていくために必要不可欠なものです。
では、これらの条件をもとにカビの発生を防ぐための対処法も交えて、さらに詳しく見ていきましょう!

2-1-1:カビが発生するために必要な条件 その①【栄養】

味噌は、煮たり蒸したりした穀物を原料に使用しますので、本来は「カビ」が発生するための栄養分が豊富にあります。

しかし、塩を混ぜることにより腐敗やカビの発生を抑えながら発酵熟成させることができるのです。

ただし「結露」や「たまり水」などの水分によって「塩分が薄まった場合」は、今度はカビにとって絶好の繁殖環境となってしまいます。

味噌作りを始めるにあたって知っておくべきこと。その1つ目は、そもそも味噌の原料は「カビ」にとって必要な栄養源であること。

そして2つ目は、塩を使うことで「腐敗」や「カビ」の発生を抑えていること。この2つを知っておくとがとても重要です。

2-1-2:カビが発生するために必要な条件 その②【空気】

カビも他の生き物と同様で「空気」を必要とします。手作り味噌の講習会で、最後にラップを味噌の上に敷くときに隙間なく空気が入らないようにラップを敷いてください」とお伝えしています。

これは、余計な雑菌が入り込まないようにするためと、カビの繁殖に必要な酸素(空気)を遮断するためでもあります。

この工程で空気が入ってしまうと、カビの生えやすい条件をひとつ作ってしまうことになるのです。

2-1-3:カビが発生するために必要な条件 その③【温度】

「空気も抜きました!」「気をつけていました!」しかし、それでもカビが発生してしまったというケースは、意外と多いものです。

実は、カビが発生する条件で一番コントロールが難しいポイント。それが「温度」です。

一般的に度が20℃~30℃くらい。そして、湿度が80%になるとカビが生えやすい環境になると言われています。

そして、一年の中でも、この条件に当てはまる時期が、皆さんよくご存じの「梅雨」の時期です。

逆に、冬の寒い時期はカビが発生しにくいことからも、カビが発生するために「温度」が重要な要素であることが理解できます。

ご家庭で味噌を仕込む際は、くれぐれも温度が高い場所や直射日光が当たる場所は避けましょう。

2-1-4:カビが発生するために必要な条件 その④【水】

あとひとつ、気をつけるべきポイントがあります。それが「水」です。カビも生き物です。ですから、他の生き物と一緒で「水」はカビの生存にとって必要不可欠です。

ここでは、先に「栄養」の項で述べたことと重なりますが、味噌の熟成が進むにつれて出てくる「たまり水」のことについて、あらためてお話ししたいと思います。

重しの周りにたまってくる「色のついた液体」といえば、味噌を作ったことのある人にはイメージがつくかもしれません。

この液体は「麹」が味噌の原料を分解して糖化することにより生成される「水分」と「糖分」がにじみ出てきたものです。

うまみが凝縮された味噌と醤油の間のような液体ですので、もし、味噌の表面に溜まってきた場合は、捨てずに味噌に混ぜ込んでください。

ただし、表面を覆うように大量に出てくる場合は、塩分が薄まりカビの発生の要因となってしまいますから、スプーンなどですくって捨ててください。

2-1-5:味噌を作る上で気をつけること

味噌を作る上で気をつけることを簡単にお伝えすると「きれいにしてから作りましょう」ということです。

ただ、家庭で作る際、無菌状態で作ることは不可能です。空気中にはいろいろな菌が存在し、時間をかけて味噌作りにいい影響を与えたり、悪い影響を及ぼしたりします。

だからこそ、悪い影響を与える菌を混入させずに味噌作りを始める必要があります。そのため、特に「作り始め」、「仕込み始め」の状態をきれいに保つようにしてください。

【気をつけること】
・味噌作りの前に手を洗う
・容器をしっかり洗い、水分を拭く
・アルコール除菌をする

上記のポイントをおさらいしながら、味噌作りを始めてください。
特別な除菌作業というのは必要なく、通常の除菌対策で問題ありません。

上記で申し上げたように、味噌作りの前に手を洗うこと、さらに味噌作りで使う容器もしっかり洗っていきましょう。もちろんアルコール除菌も有効です。

2-2:創業より600年以上続く種麹屋さんのお話

さて、ここでひと息ついて当社の取引先である「種麹(たねこうじ)屋さん」の話をしたいと思います。
種麹屋さんとは、お味噌や焼酎を造る時の種菌(たねきん)を売っているお店のことです。こちらの若い営業担当の方のお話です。

2-2-1:自宅で味噌を作ったらカビが生えた!

彼は、仕事柄ご自身も自宅で味噌作りをやっていたそうです。当然味噌作りに関する知識もありますので、カビの対策など細心の注意を払って自宅での味噌作りに取り組んでいたそうです。

ところが、実際に味噌を作ってみると、注意していたにも関わらずカビが生えてきてしまったそうなのです。

はじめは「白いもの」が出てきて、その後に「黒いカビ」」が出てきたとのこと。
続けて彼、「特に黒っぽいカビは繁殖力が強かった!」と言っていました。

2-2-2:彼曰く「家庭ではカビが出やすい」

彼の話は非常に興味深いものでした。実際、彼自身もカビの発生に関しては細心の注意を払っていました。

しかし、それでも味噌にカビが生えてしまったのです。ここから言えることは、一般家庭での味噌作りにおいては、カビが発生してしまうリスクが高いということ。

もちろん、家が汚い、と言っているのではありません。しかしながら、屋根裏や床下含めてどんな菌が存在しているかも分かりません。実際に、どんなに綺麗にしてもカビが発生してしまうことがあるのです。

そもそも家庭での味噌作りは、蔵や工場で作る味噌作りとは大きく違う点があるということなのです。

2-2-3:家庭と味噌屋では、何が違うのか?

この種麹屋さんが言っていたのは、やはり家庭と味噌屋の工場では味噌作りをするのに色々な条件が違うということでした。

でも、ここで疑問が残ります。
私達の工場は移設してからすでに50年以上が経っています。常に清潔な環境を保つように清掃を欠かしません。

しかし、それでも完全には清掃が行き届いてない個所もわずかながらあります。ということは、カビが全くいないということはあり得ません。そういった点から言えば、家庭と味噌屋の工場に大きな差があるとは考えにくいはずです。
この点について彼の見解は以下の通りでした。

工場では味噌を毎日作っているため「味噌菌」が優先的にいるということ。そのため、そもそも味噌屋の工場は日常的に味噌菌が充満しており、味噌菌の影響が強く働いていること。そのため、他の菌が増えにくい環境が、自然と出来上がっているとのことでした。

また、天井が高く換気が行き届いていることなどからも、家庭と比べて味噌菌以外のカビが繁殖しづらいとのことでした。

2-3:味噌醤油造りにはとても必要なカビ

さて、これまでのお話の流れからすると「カビは汚いもの」というイメージを与えてしまったかもしれません。そこでこの章の最後に、二代目から聞いた「カビの一種である麹菌の力を借りて味噌作りをしてきた」という話をして、最後を締めくくりたいと思います。

2-3-1:二代目から聞いた話

味噌醤油作りに必要不可欠なカビ。味噌醤油は、カビの一種である“麹菌”の力を借りて作るものです。我々の会社の二代目、横山則秋から以前聞いたエピソードをご紹介します。

それは1972年、住み慣れた旧工場から新工場に移るときのこと。旧工場から車で30分のところにできた真新しい工場。床も壁もピカピカです。

そんな新工場で一番初めにやったこと。

2代目則秋社長の号令のもとで、旧工場から持ってきていた「出来上がったお味噌」と「出来上がった醤油」を思い切って床にばらまくようにと指示をしたことでした。

「バチャー、バチャー。」

真新しい工場が醤油の黒い色にみるみる染まっていきます。

きれいに磨き上げた工場が、一瞬汚くなってしまうのは心苦しくなってしまいそうですが、2代目は違いました。

なぜなら、
真新しい工場に今までの味噌と醤油をばらまいて、100年受け継がれている当社独自の味噌菌と醤油菌を、工場の中に充満させたかったから。
もちろん、しばらくしてから、まいた味噌と醤油は水で洗い流してきれいにしています。

ほかにも似たような話を聞いたことがあります。
ある醸造メーカーの工場長がアメリカに新しく工場を造ったとき、一番初めにある事をしたそうです。それが、日本の醸造蔵で働いていた従業員の上着を洗濯せずに運んで、しばらく新工場の中に置いていたとのこと。これも、醸造の工程で必要な「菌」を、あらかじめ馴染ませるという意味で行っていたのかもしれません。真偽のほどはわかりませんが、うなずける話ですね。

第3章:カビを発生させないための「事前の防止策」とは?

味噌作りにおいて、カビの発生というのは本当によく起こる現象です。味噌はカビの一種である麹菌を使ってできる食品なので、当然それ以外のカビも作っている過程で発生しやすくなります。
ここではカビを発生させないために事前にやっておくべきことについて解説していきます。

3-1:事前にカビを防ぐために

ここまでカビの発生しやすい条件について解説をしてきましたが、一般家庭において工場のようなカビが生えにくい環境を用意するというのは非常に難しいかと思います。ですので、ここからは一般家庭でも実施できるカビの防ぎ方について解説をしていきます。

3-1-1:味噌作りは、カビがいる前提でやる

前章の話の再確認になりますが、どんなに綺麗にしていてもカビ菌はあらゆるところに存在しています。

そもそも、私たちは日常を「カビと共生」しているのです。ですから、一般家庭での味噌作りは、カビ対策などひと手間かかるものと思っておいてください。

3-1-2:カビを「0」にするのは無理。極力減らすという考え方でやる

そもそも体内外に生息する常在菌の数は40〜100兆個に及ぶと言われています。

当然、これらを”0”にするということは非常に難しいです。無菌処理をしている工場や研究室ならまだしも、一般家庭でこの環境を実現するのは不可能でしょう。

ですから、カビを「0」にするのではなく、「極力減らす」という考え方で対策をしていくことが重要です。そして、そのために必要なことをすればいいのです。

3-1-3:実際にやるべきこと

では、その必要なこととはなんでしょうか? 

実は非常に簡単なことです。
それは、味噌作りで使用する容器や自分の手を「きちんと洗ってから仕込む」ということ。とても簡単で、拍子抜けするかもしれません。

しかし、これこそがカビを防止するための基本です。さらに言うと、使用する容器や器具もしっかりとアルコールで除菌することで、より、カビの発生リスクを抑えられるのです。

3-2:カビを防ぐ観点からの容器選び

カビが発生する原因としては「容器」が大きく関係します。ここからは味噌造りの容器について解説をしていきます。

3-2-1:カビが発生しやすい容器とは

味噌作りの際に皆さんはどういった容器を思い浮かべるでしょうか?
おそらく木樽をイメージされる方が多いと思います。

しかし、実は木製の樽は非常にカビが発生しやすく扱いが難しいため、一般向けではありません。木樽の素材である「木材」は、水分をよく吸収するので、非常に乾きにくい特徴があります。

つまり、前章でご紹介した、カビが発生しやすい条件の1つである「水」が、木樽の中にはいつも存在していることになります。

ただし、古くから味噌屋で木樽が使われてきたのも事実です。これについては、味噌屋では日頃から蔵の中に「味噌菌」が充満していること。そして、職人による「定期的なメンテナンスが行き届いている前提」があります。

そもそも味噌屋と一般家庭では「環境面」が大きく違うのです。そういった観点から、一般家庭の場合は木樽を使用することでカビを生やす条件を一つ増やすことになってしまうので、味噌作りの際に木樽は使わない方が無難でしょう。(家庭での木樽での味噌作りを否定しているわけではありません。)

3-2-2:では、どの素材の容器が良いのか?

では味噌を手作りする際に使用する容器は、どういったものがいいのでしょうか。ぬか漬けでよく使用するホーロー容器がいいのか、頑丈なステンレスがいいのか、たくさんある容器の中からひとつを選ぶのは、難しいですよね。

しかし、その前に、長年味噌を作り続ける味噌屋は、「味噌造りにおいて何を最も重視しているのか」というポイントを押さえると、容器選びのヒントが見えてきます。

3-2-3:味噌作りにおいて、味噌屋が最も重視するポイント

それぞれの地域によって変わりますが、味噌造りの職人は、味噌を長期熟成した方がいいのか、短期熟成の方がいいのか、夏を越すまで置いておくのか、冬を越すまで置いておくのか、その上で仕込み量はどれくらいにするのか…などなど、地域性も考慮した上で、その時の「気温」や「熟成させる時間」をとても重視しています。

つまり、味噌造りの専門家が気にしているのは容器の素材よりも、「外気の温度が、どれくらい仕込み味噌へ影響するのか」ということを、いつも気にかけているのです。

ひるがえって、一般家庭で味噌を手作りできる量は、せいぜい1kgから5kg。このぐらいの量であれば、特に外気の影響を受けやすいので、実は容器の素材ありきで選ぶよりも、味噌の仕込みの際の「外気の温度」を念頭に置いて、容器を選ぶことが大切です。

つまりこの観点から言えば、外気の温度が伝わりやすく「結露しいやすい」ステンレスやホーローは難易度が高くなりがちで、初心者は避けた方が無難だといえます。

また、気温が高い時期のことを考えると、木樽は衛生管理の点で注意が必要となります。

3-2-4:要は衛生的かどうかで選ぶ

まとめてみたいと思います。
容器選びでは「どの容器が味噌作りにいいか?」と考えがちです。
しかし、そうではありません。
「衛生的に味噌作りをするためには、どの容器が一番いいか?」そして、「容器による気温の仕込み味噌への影響は、どれが一番少ないか」と考えてもらいたいのです。

それそれの容器にはそれぞれの良い点と注意点があります。
繰り返しますが、自宅で味噌作りをする際には、菌を極力減らした状態を目指すことが大切ですので、まずは何と言っても「衛生面」を意識してください。

本来、どの容器でも味噌づくりは出来ますが、手に入れやすさと衛生面が優れている観点でいえば、プラスチックの容器をおすすめしています。

味気(あじけ)ないと思われたかもしれませんが、プラスチックの容器は、乾燥が早く軽くて持ち運びに便利です。

また、衛生面に優れていて何よりも安価です。ですから、よほど見た目を重視しなければ、初心者には、プラスチック容器が一番扱いやすいと言えます。

味噌造りにおいてどの容器を使うかよりも、あくまで「衛生的」かどうかが重要になっていきます。どの容器を使うにしても、使う前にしっかりと洗っておくことが大切です。

加えてアルコールシートなどで容器を除菌するとより効果的ですので、ぜひ除菌対策を行ってから仕込みに取りかかってください。

3-3:あらためて味噌作りをする前が肝心!

味噌造りにおいて、衛生面の重要性はご理解いただけたかと思います。では次に、実際に味噌作りにおいての準備段階で重要なことについて解説をしていきます。

3-3-1:容器の殺菌等は十分すること

先ほどもご紹介したように、仕込む前に容器の殺菌は十分に行いましょう。容器の中はもちろんのこと、壁面や外側もしっかりと洗っていきます。洗った後は水分をしっかりと拭き取り、アルコールシートで除菌をしていきます。

アルコールシートが無い場合は、食器用アルコールを容器に吹き付けてキッチンペーパーで拭いてもかまいません。

3-3-2:一番肝心なのは、手をしっかり洗うことです

カビや産膜酵母の菌は、人間の皮膚や空気中に常に潜んでおり、その中には悪い影響を及ぼすものがいれば、良い影響を及ぼすものも存在しています。

わたしたちは、「良い菌」だけの力を借りて美味しく味噌を作りたいと考えています。そのためにも、味噌に直接触れる際はしっかり手を洗うことを徹底して取り組んでいます。

これさえ出来れば、カビの繁殖を根本から抑えることに繋がり、美味しい味噌を作ることが出来るのです。

と、ここまで衛生面のことを強調してきましたが、実は、私たちの「手作り麦みそ講習会」では、味噌を混ぜる時、あえて「手袋をしてください」とはお伝えしていません。

それはなぜなのか?
蒸した大豆と麦を混ぜ合わせる際に伝わる「肌の温もり」と「手触り感」。これらは衛生面とは別に、「自分の手で感じながら、手作りする体験」は、何物にも代えがたいと考えているからなのです。

「手洗い」と「容器の衛生面」を、しっかりするという前提で、皆さん素手で一生懸命作っているようです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
今回は、自宅での味噌作りの際の「カビが発生する条件」と「事前の防止策」について解説をしてきました。

味噌作りの知識がある方でも、家庭での味噌作りとなるとカビを生やしてしまうというケースも耳にします。

しかしながら、カビの性質をしっかりと理解し、家庭での衛生環境を整えた上でしっかり対策を行えば、カビを発生させずに美味しいお味噌を作ることが可能です。

一番のポイントは、「容器や自分の手をしっかり洗うこと」。そして、アルコールシートなどで除菌することで、味噌作りに必要でない菌を極力減らすことです。

味噌作りにこれから取り組まれる方、もしくはすでに取り組まれている方どちらにとっても、今回のお話が参考になれば幸いです。衛生面をしっかりと整え、美味しい味噌作りを目指していきましょう。