手作り味噌のカビ防止について

こんにちは。
私たちは、南国鹿児島で110年続く味噌醤油屋 (有)かねよみそしょうゆ です。

桜島を真正面に望む海岸端で、お味噌とお醤油を作り続けて110年。

日本のお味噌の9割以上は米味噌のところ、「麹歩合」高めで、約一ヶ月の熟成で造り上げる “多麹・短期熟成” の「麦味噌」を専門に造っている醸造元です。

そもそも全国には、味噌醤油屋さんが約1200社あります。味噌醤油の作り方は、その土地土地の気候風土と歴史性もあいまって、各地域ごとで随分違います。

ですから、作り方について「どれが正解」ということはありません。どの地域の味噌醤油もそれぞれ味わい深く、永きにわたって親しまれてきた伝統食品です。

ただし各社造り方は違っても、麹(こうじ)という“生き物”の力を借りながら発酵食品を造っていく過程の「味噌作りにおける失敗」という点に置いては、共通点が多いのも事実です。

これらの“共通点”を踏まえ、私どもが主催している「手作り麦みそ講習会」の受講生から受けた質問をおりまぜながら、職人の体験と知恵を交えて楽しく知っていただき、各家庭での味噌作りをより“楽しく” そしてより“おいしい”ものにしていただければ幸いです。

それでは始めましょう。

 麦みそ手作り講習会-基礎知識集 

手作り味噌のカビ防止について

本記事では、これまでの当社での実例をもとに、味噌作りの際の「カビ防止」についてまとめました。

味噌作りの際に「カビ」でお困りの際に、この記事が解決の糸口になれば幸いです。

なお、この記事では味噌作りの際に発生する「カビ」と「産膜酵母」を、総称して「カビ」として書いています。
「カビ」と「産膜酵母」については、
【基礎知識集-味噌作りでカビが発生した時の「対処方法」と「事前の防止策」について】の第1章をご参照ください。

この記事の目次

第1章:手作り味噌のカビ防止について

1-1:カビを防ぐには?

カビを事前に防ぐためには、まずカビの事を知る必要があります。カビがどのように発生するのか?というところから考えてみると、とるべき防止策が具体的に見えてきます。

1-1-1:そもそもカビは日常的に身の回りにいる

繰り返しお伝えしていることですが、あなたが住んでいる家や人が出入りする場所など、至る所にカビは潜んでいます。

それは、例えどんなに家をキレイに掃除をしていたとしても、あなたが過ごす家の屋根裏や床下なども含めて、カビ菌は必ず存在します。

もちろん、あなたがキレイに掃除をしている家のことを汚いと言っているわけではありません。そうではなく、本来、味噌は色々な菌がいる中で、味噌作りに必要な菌だけを活かして作るものです。

ですから、そもそも味噌菌が住みついていない家庭では、カビが発生しやすいということなのです。

1-1-2:だから、味噌作りは「カビ」がいる前提でやる

自宅で味噌を手作りする際に使用する容器や器具にも、目に見えない菌がたくさん付着しています。それだけでなく、私たちの手にも良い菌も悪い菌も含めて「常在菌」という菌が潜んでいます。

まずは、私たちも身の回りで至る所に菌がいることを前提にして、味噌作りを行うことが大切なのです。

1-1-3:カビを「0」にするのは無理。極力減らすという考え方でやる

そもそも、日常に潜んでいる菌を全て排除して「0」にすることは、とても難しいです。菌が存在しない無菌の工場や研究室ならまだしも、一般の家庭で菌をなくすことは不可能に近いでしょう。

このような菌を排除できない環境では、そもそも味噌を作る際に大切なのは菌を「0」にするのではなく、「極力減らす」という考え方で取り組まなければなりません。この考えをもとに、実践できることを行えば良いのです。

では、菌を極力減らすために必要なことはなんでしょうか?
それは、味噌作りで使用する容器や自分の手を「きちんと洗ってから仕込む」ということ。とても簡単で、拍子抜けするかもしれません。

しかし、これこそがカビを防止するための基本です。さらに言うと、使用する容器や器具もしっかりとアルコールで除菌することで、より、カビの発生リスクを抑えられるのです。

1-2:カビを防ぐ観点からの容器選び

1-2-1:カビが発生しやすい容器とは

味噌屋では「木樽で味噌を作っている」というイメージをもたれている方も多いのではないでしょうか。

実際に、初めて味噌作りをされる方で「味噌を作るなら木樽で」という方は少なくありません。

しかし、実は樽はカビが発生しやすいという特徴があります。また、天然の素材であるためにメンテナンスも大変なため、現在では木樽で味噌作りをしている味噌屋さんは、随分と少なくなりました。

そもそも、木樽の素材である「木材」は、水をたっぷりと吸収します。そのため、いつも湿っているのが特徴です。

つまり、常にカビが発生しやすい「水分」をいつも溜め込んでいるので、たまにしかお味噌を作らないという一般家庭での場合は、皆さんが思っている以上にリスクが大きいのです。

ですから、当社としては、一般家庭での味噌作りで「木樽」を使用することは、あまりおすすめしていません。(木樽での味噌作りを否定しているわけではありません。)

ただし、古くから味噌屋で木樽が使われてきたのも事実です。これについては、味噌屋では日頃から蔵の中に「味噌菌」が充満していること。

そして、職人による「定期的なメンテナンスが行き届いている」という前提があります。そもそも、味噌屋と一般家庭では「環境面」が大きく違うということだけ、頭に入れておいてほしいのです。

1-2-2:では、どの素材の容器が良いのか?

では味噌を手作りする際に使用する容器は、どういったものがいいのでしょうか。ぬか漬けでよく使用するホーロー容器がいいのか、頑丈なステンレスがいいのか、たくさんある容器の中からひとつを選ぶのは、難しいですよね。

しかし、その前に、長年味噌を作り続ける味噌屋は、「味噌造りにおいて何を最も重視しているのか」というポイントを押さえると、容器選びのヒントが見えてきます。

1-2-3:味噌作りにおいて、味噌屋が最も重視するポイント

それぞれの地域によって変わりますが、味噌造りの職人は、味噌を長期熟成した方がいいのか、短期熟成の方がいいのか、夏を越すまで置いておくのか、冬を越すまで置いておくのか、その上で仕込み量はどれくらいにするのか…などなど、地域性も考慮した上で、その時の「気温」や「熟成させる時間」を重視しています。

つまり、味噌の専門家が気にしているのは容器の素材よりも、外気の温度が、どれくらい仕込み味噌へ影響するのか」ということを、いつも気にかけているのです。

一般家庭で味噌を手作りできる量は、せいぜい1kgから5kg。このぐらいの量であれば、特に外気の影響を受けやすいので、実は容器の素材ありきで選ぶよりも、味噌の仕込みの際の「外気の温度」を念頭に置いて、容器を選ぶことの方が大切になります。

つまりこの観点から言えば、外気の温度が伝わりやすく「結露しいやすい」ステンレスやホーローは難易度が高く、初心者は避けた方が無難だといえます。

また、気温が高い時期では、木樽は衛生管理の点で注意が必要となります。

1-2-4:要は衛生的かどうかで選ぶ

まとめてみたいと思います。
容器選びでは「どの容器が味噌作りにいいか?」と考えがちです。
そうではありません。

「衛生的に味噌作りをするためには、どの容器が一番いいか?」そして、「容器による味噌仕込みへの気温の影響は、どれが一番少ないのか」と考えてもらいたいのです。

それぞれの容器にはそれぞれの良い点と注意点があります。

繰り返しますが、自宅で味噌作りをする際には、菌を極力減らした状態を目指すことが大切ですので、まずは何と言っても衛生面を意識してください。

本来、どの容器でも味噌づくりは出来ますが、手に入れやすさと衛生面が優れている観点でいえば、「プラスチックの容器」をおすすめしています。

味気(あじけ)ないと思われますか?しかし、プラスチックの容器は、乾燥が早く軽くて持ち運びにとても便利なのです。

また、衛生面に優れていて、何よりも安価です。ですから、よほど見た目を重視しなければ、プラスチック容器が一番扱いやすいと言えます。

もちろん使用する際は、水でしっかり洗いましょう。そして、アルコールシートなどで除菌をすれば、よりカビを防止することに繋がります。

1-3:あらためて味噌作りをする前が肝心!

1-3-1:容器の殺菌等は十分すること

 手作りの味噌を仕込む前には、しっかりと容器を洗うことが肝心です。内側も外側もよく洗って、菌を極力減らします。

洗った後は水分をしっかり拭き取り、アルコールなどで除菌しましょう。食器用アルコールを吹き付けてキッチンペーパーで拭いても良いでしょう。

こうすることで、カビのリスクを遠ざけて味噌を作ることができます。

1-3-2:一番肝心なのは、手をしっかり洗うことです

カビや産膜酵母の菌は、空気中や人間の皮膚にも常に潜んでいます。その中には良い影響を及ぼすものがいれば、悪い影響を及ぼすものも存在します。

このような状況のもとで、味噌作りの際に良い菌だけを取り入れることは、そもそもが無理な話です。

ですから、自宅での味噌作りをする際に「手袋をして」とか「袋の上から」とか指示されることもあるかと思いますが、これは衛生面から考えると、とても良いやり方だと言えます。

もちろん、素手で作る場合もありますが、いずれにしても味噌作りの際には、まずはしっかり手を洗うことを徹底してほしいと思います。

手のひらや手の甲を洗うのはもちろんですが、特に爪の間に雑菌が溜まりやすいので、しっかりと洗う必要があります。爪ブラシを使用するのもおすすめですね。

そもそも爪が短い方が汚れが溜まりにくいので、爪をしっかり切ってから味噌を仕込むこともおすすめしています。

爪を短く切ることができない場合や手に傷がある場合、また、皮膚が弱くて塩分でかぶれてしまう場合には、手袋をして行うのもいいでしょう。

これさえ出来れば、カビの繁殖を根本から抑えることに繋がり、美味しい味噌を作ることが出来るのです。

ちなみに、私たちの「手作り麦みそ講習会」では、味噌を混ぜる時、あえて「手袋をしてください」とは、お伝えしていません。

それはなぜなのか?蒸した大豆と麦を混ぜ合わせる際に伝わる「肌の温もり」と「手触り感」。これらは衛生面とは別に、「自分の手で感じながら、手作りする体験」は、何物にも代えがたいと考えているからなのです。

「手洗い」と「容器の衛生面」をしっかりするという前提で、皆さん素手で一生懸命作っているようです。

第2章:それでも、手作り味噌にカビが発生してしまったら

1章では、仕込む前からのカビ防止についてお話ししました。
しっかりと手を洗い、使用する容器もアルコールなどで除菌することで、味噌に持ち込んでしまう菌の数を極力減らすことが重要であることをご理解いただけたと思います。

ただし、これまでにもお話しした通り、しっかり手洗いをして容器を除菌したとしても、持ち込んでしまう菌の数を「0」にすることは、そもそも不可能です。ですから、カビが発生するリスクは少なからず残ってしまいます。

そこで第2章では、カビが発生してしまった時の対処方法についてお話ししていきます。カビの取り除き方から、取り除いた後の注意点まで一つずつ確認していきましょう。

2-1:カビらしきものが発生してしまったら

味噌の表面に発生したものが「白い色」ならば、ほとんどの場合「産膜酵母」だと考えられます。「黒い色」なら黒カビの可能性が高いです。

この点については、あらためて【基礎知識集-味噌作りでカビが発生した時の「対処方法」と「事前の防止策」について】の第1章をご覧いただいて「産膜酵母」なのか「カビ」なのか、しっかり観察して見極めてください。

2-1-1:カビが発生しても慌てないこと 

もし手作りした味噌にカビが発生してしまっても、味噌自体がダメになるわけではありません。

カビを発見したら、慌てないことが大切。状況に応じて適切に対処することで、味噌にカビが発生したとしても美味しい味噌をいただくことができます。

2-2:そもそも、カビは取り除くべきか?

2-2-1:もし放っておくと?

一度カビが発生してしまった味噌は、鼻につくキツい匂いや見た目の悪さが目立つだけでなく、そのまま放っておくとどんどんカビが増殖していきます。

カビが繁殖するにつれ、味噌の状態は悪くなる一方。味噌の旨味成分も瞬く間に失われていき、悪化していくばかりです。

さらに、カビが発生した部分は全て取り除かなければならないため、出来上がる味噌の量も減少します。カビが発生する分だけ、美味しく食べられる味噌が減ってしまうのです。

2-2-2:カビが生えても食べられるのか

もし味噌にカビが発生してしまっても、カビは味噌の表面にのみ発生するので、全て取り除けば安全に食べることができます。

カビを見つけた場合は、慌てずにカビが生えている箇所から約1センチほど大きく取り除きましょう。

味噌は、完成するまでが勝負です。
完成して冷蔵庫に入れてしまえば、カビの発生を抑えることができるため、カビとの戦いは熟成期間だけ。

カビを発生させないためにも、定期的に味噌の観察をしながら、美味しく出来上がるのを待ちましょう。

2-3:カビの取り除き方

2-3-1:カビの周囲から取り除く

 カビを取り除く場合は、まず仕込んでいた味噌を覆っているラップを外します。その後、カビが発生している箇所から約1センチほど大きく取り除きましょう。

取り除く深さは、5mmから1cmほどを意識してください。

2-3-2:常に清潔に

カビを取り除くとき、改めて手などに付着しているたくさんの雑菌に注意して行いましょう。使用する器具も、お箸などの木製よりも金属やプラスチックのスプーンの方が好ましいです。

味噌を仕込む時と同様に、手もしっかり洗うことが大事。カビを取り除く際も、極力菌が入り込まないように行います。

2-4:カビを取り除いた後にすること

2-4-1:窪みを平らに慣らす

カビを取り除いた後の処理も忘れないようにしましょう。まずは、窪みを平らに慣らすこと。平らにすることで、窪みに再び水分や空気が溜まるのを防ぎ、カビの再発を防げます。

2-4-2:空気に触れさせない

味噌が出来上がるまでは、味噌の表面に空気が触れないように遮断しましょう。改めて空気が入り込まないようにしっかりとラップをします。

特に、ラップと味噌の間に隙間がなくなるように行うことがポイント。空気があるところにカビは発生するので、空気だまりが出来ないように味噌の表面にラップをしっかり密着させてください。

2-4-3:あらためて容器も綺麗にする 

ラップをしたら、再度容器も綺麗にしましょう。容器の表面や蓋など、外気に触れる部分は徹底的に除菌をします。

除菌シートを使用してもいいですし、アルコールで拭いても構いません。味噌を覆っているラップの表面も、水滴を拭いてから除菌します。

2-4-4:置き場所の再検討をする

カビが発生した場合、それまで置いていた場所とは別の場所を検討してみましょう。

あらためてですが、湿気が多くよどんでいる場所や気温が高くなる場所、直射日光が当たる場所は避けましょう。風通しがよく空気が循環する場所に置くのがおすすめです。

2-5:すでに木樽で仕込んでいたら

すでに木樽で仕込んだという方もいらっしゃることでしょう。先にもお伝えしましたが、木樽で仕込むことは必ずしも悪いことではありません。カビが発生していなければ、そのまま様子を見ていただいて結構です。

2-5-1:もし、カビが発生したら

第4章でお伝えした通り、木樽は水分を吸収するため雑菌が繁殖しやすいのが難点です。一度カビが発生してしまうと、取り除いたとしても、また発生する恐れがあります。

もし可能なら、プラスチックの容器に入れ替えるのをおすすめします。

自宅で仕込む際は、木樽で熟成させるよりもプラスチックなどの他の容器に思い切って入れ替えた方が衛生的です。雑菌が繁殖しにくくなり、美味しい味噌が出来上がる可能性が高まります。

2-5-2:詰め直す際の注意点

他の容器に入れ替えるときは、極力菌を減らすためにしっかり洗ってから使用しましょう。味噌を少しずつ移し替え、空気が入らないよう押さえながら敷き詰めます。

もし、空気を抜かないで詰め替えてしまうと、味噌が異常発酵してしまう恐れがあるため注意が必要です。

詰め終わったあとは、味噌の表面に空気が入らないようにラップをします。容器の除菌も忘れずに行ってください。

まとめ

今回は、手作り味噌のカビ防止とカビが生えた場合の対処法についてお話ししました。

家庭での味噌作りはどうしても無菌状態で仕込む事は難しいので、カビをゼロにする事はまず無理です。カビの繁殖をいかに最小限にするか、この点を重要視しましょう。

その上で、手を丁寧にしっかりと洗いアルコールで消毒をしてから仕込むようにして、仕込み時に使用する調理器具、容器も仕込みの前段階でしっかりと洗浄し、アルコールで消毒してから仕込みを始めるようにしてください。

また、カビの繁殖を少しでも抑える観点から考えると、カビの生えやすい木樽や結露しやすいステンレス・ホーローなどは、中級・上級者用と考えてください。

軽くて衛生面でも扱い易いプラスチックの容器を使うのが、初心者にはおすすめです。

味噌を仕込んだ後は、空気に触れている部分はカビが発生しやすくなりますので、しっかりとラップで覆い空気を遮断してください。

お味噌を作る前から衛生面をしっかりと整えることで、味噌への菌の持ち込みを最小限に抑えられます。その結果として、美味しいお味噌が出来あがる可能性もグンと上がりますので、ぜひ、ご家庭で実践してみてください。

 

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