先代、先々代からの言い伝えられたお話

シリーズ②

今日も味噌の製造現場では工場長の声が響きます。

「蒸した大豆は柔らかく。でも外観は潰れないように硬く!」

「もっと早く袋詰めするように。でも機械化はできないよ!」

「蒸した大豆と塩と麦こうじは均一にしっかり混ぜるように。でも絶対に潰さないようにすること!」

まるで矛盾だらけです。試験室の品質管理も大変です。

でも、味噌造りの現場を任されている職人たちは一言も文句を言わずに、黙々と自分たちの責任を果たそうと麦麹と大豆に向かっています。

最新の“機械”や斬新な“作り方”がある時代。

どうしてこのような矛盾した、面倒なコトを長年かけてやり続けているのか?

2代目当主だった則秋は語っていました。

「味噌は樽からそのまま掬った(すくった)状態、つまり粒のままが一番おいしい!」

スクリューポンプで絞り出せば味噌は簡単に運べます。アルコールを味噌に添加をすれば麹菌を眠らせて長期間袋に入れても見た目が良くなります。高速で機械を回して混ぜれば、楽にしっかり混ぜることができます。

しかしそれらをやってしまうと、せっかくの大豆の粒が潰れておいしさが半減してしまいます。さらに香り立つ麦麹のおいしさも楽しむことができなくなってしまいます。

つまり私たちの求める、おいしい「みそ汁」は効率化の先にはないのです。

粒のまま、アルコールで麹を眠らせない。それを業界では「生みそ」と言います。

「粒のままが一番おいしい!」

先代から伝わっているこのお味噌造りを守るため、今日も矛盾した作業に現場は必死に取り組んでいるのです。

私たちは南国の地で100年、「麦のうま味」たっぷりの“生みそ”作りに励んでいる会社です。