先代、先々代からの言い伝えられたお話

シリーズ③

今から8年前、台湾で初めて試食宣伝をした時のことでした。“初めての海外”ということもあり、張り切ってお味噌やお醤油、ぽんずやめんつゆ等たくさんの商品を持って行きました。

豆腐に自慢の醤油をかけて振る舞い、淡口醤油をスープ仕立てにして振る舞い、そうめんに“めんつゆ”をかけて振る舞い、たくさんの試食を出し、台湾のお客さんに私たちの商品をPRしました。

しかし・・・正直言うと台湾の人たちの反応は芳しいものではありませんでした。1日中立ちっぱなしということもあり、また私たちの自慢の商品が受けられなかったということもあり、夕方には疲労困憊。そんな日々が3日ほど続きました。

試食最終日、この状況をよく見ていた現地台湾のアルバイトの子から質問されました。「ここは台湾です。横山さんは台湾に合わせた味の“醤油”や“味噌”は作らないんですか?」

悩みました。自慢のお味噌やお醤油は鹿児島で1番人気の商品。でも台湾ではなかなか受け入れてもらえなかった現実。

彼女の質問はとても真っ当な質問です。

でもその時、私の口から自然と言葉がついて出てきました。

台湾向けの醤油を作る事は考えていません。台湾に合わせた醤油は台湾の現地の醤油屋さんが既に作っているから」。「私たちは“大手”のように自分たちの“商品の味”を、その土地向けに簡単に変えることがないのです」。

「ただ今回のことで地元に合わせた“使い方の提案”はしっかりやっていかないといけない、ということはよく勉強させてもらいました」と答えました。

「大手と同じことをしていちゃあ、つまらんわ!」

昔、二代目則秋はよく言っていました。

商品そのものは変えない。しかしまだまだ伝え切れていない自分たちの商品について「世の中に問う」ことをしていかなければいけない。そんな思いで台湾の地を後にしたのでした。