先代、先々代からの言い伝えられたお話

シリーズ⑩

南国鹿児島で味噌醤油を造り始めてもう100年以上。普段から色々な「食」にまつわる話を見聞きします。

今回はそんな中から一部をご紹介します。

今回のお話は「職人さんの知恵パート2」です。

前月号のあらすじ

40年前、今の工場に移って休日前には工場をきれいに、と一生懸命水洗いをしていた醤油現場の職人たち。しかし、その一生懸命さとは逆に週明けには高い確率でカビの発生。

洗いもれがないように、時間をかけて丁寧に洗ってもやはりカビが発生。

さて、この当時、どのようにして解決していったか・・・

答えはタンク等洗わずに、逆に週末「空(カラ)のタンクを醤油一杯に満タンにした」ということ。

理屈はこうです。週の最後の日に、水でタンクを洗い流す。しかしどんなにきれいに洗い流しても、目に見えない形で醤油はわずかですがどうしても付着しているのです。

これに洗い流された水と混ざると“カビ”にとっては適度な塩分。カビの発生する条件としては最高です。

「それならいっそのこと!」ということで、 醤油をタンクに入れて帰ったら、翌週からはピタッとカビは発生しなくなったそうなのです。ふつう醤油の塩分は10%以上。実はこれ自体がカビの発生防止にとても役立っていた、というお話。

人間の力(ちから)以上に醤油の持つ“本来の力”を発揮した方がずっと良かった、ということかもしれません。

どんなに長い職人さんも、現場から勉強することが、まだまだたくさんあったようです。

それ以降、工場の中の週末の景色は機械まわりや床は、ピカピカになるまで掃除をします。そして職人さんたちが帰る夕方、醤油タンクはお醤油がいっぱい満々と入っているようになりました。